料理と舞台を楽しむ、ザンクト・ガレンの一夜|Cabaret Foodstories
著者:Eat Well · Feel Well · Live Well 編集部

19世紀末のパリで、芸術家や詩人たちが集う場所として生まれたキャバレー。テーブルを囲み、食事や会話とともに舞台を楽しむ文化は、今もさまざまな形で続いています。スイス東部ザンクト・ガレンの「Cabaret Foodstories」では、料理とパフォーマンスが交互に登場し、一晩の物語をつくります。
会場は、ザンクト・ガレンの旧貨物駅エリアにある「Gut & Güter」。アクロバット、バーレスク、ドラァグなどの演目が、ディナーの合間に披露されます。舞台を観た後にはテーブルで会話を楽しみ、やがて次の料理が運ばれてくる。食事とショーの両方に時間が用意された夜です。
敏腕シェフの Maurin Böni (マウリン・ベーニ)
この夜の料理を率いるのは、シェフのMaurin Böni(マウリン・ベーニ)。アッペンツェル地方のHotel Hof Weissbadに在籍していた2022年には、スイスの職業技能大会SwissSkillsの料理部門で決勝に進みました。Cabaret Foodstoriesでは、チームとともにシーズンごとの4品のメニューを考案しています。
深い白皿の中央に小さく盛られた料理は、まず余白ごと眺めたくなる一皿。別の皿では鮮やかな緑の上に具材や薄いチップが重なり、色と形の違いが目を引きます。紙に包まれた二つの小さな料理は、包みを開く瞬間まで食事の楽しみにしてくれそうです。
4品のコースは、各皿をメニューから選べるアラカルト形式です。肉や魚のほか、ベジタリアン、ヴィーガン向けの選択肢も用意され、アレルギーについては事前に相談できます。隣の人とは違う料理を選びながら、同じ演目を観る。テーブルごとに会話が変わるのも、この形式の面白さです。
2026年11月に始まる第5シーズンでは、ステージを広げ、会場の装飾も新しくする予定です。出演者が客席の間でパフォーマンスする場面も計画されています。皿に目を向け、顔を上げれば舞台が始まる。ザンクト・ガレンの夜を過ごす、ひとつの選択肢になりそうです。
キャバレーは、もともと何だったのか
フランス語の cabaret は、もともと小さな酒場を指す言葉です。19世紀には歌を聴ける場所もありましたが、詩、音楽、美術、演劇などを一つの小さな空間で組み合わせる芸術キャバレーが形になるのは、1880年代のパリです。大きな劇場で客席から舞台を見上げるのとは違い、出演者と観客の距離が近い場所でした。
転機として挙げられるのが、1881年にモンマルトルで開いた「ル・シャ・ノワール(Le Chat Noir)」です。詩人や画家、音楽家が集まり、詩の朗読や歌、風刺、後には影絵芝居も披露されました。主宰者ロドルフ・サリスは出演順や空間の演出にも関わり、店そのものを芸術の舞台にしました。店が発行した雑誌も、その文化を外へ広める役割を果たしています。
スイスで育まれた、もうひとつのキャバレー
1916年、チューリッヒの「キャバレー・ヴォルテール」には、詩人や芸術家たちが集まっていました。詩の朗読や音楽、舞台での実験が重なり合い、そこから前衛芸術運動「ダダ」が生まれます。
その後もスイスでは、歌やユーモア、風刺を交えた舞台が親しまれてきました。1930年代に登場した「Cornichon」をはじめ、1950〜60年代にも各地で個性豊かな出演者やグループが活躍。時代ごとに表現を変えながら、キャバレー文化は続いてきました。
華やかな舞台だけでなく、音楽やユーモア、人々が同じ空間で過ごす時間も、キャバレーの魅力です。その楽しみ方は今、ザンクト・ガレンの「Cabaret Foodstories」で、料理とともに新しい表情を見せています。
公演の夜は市内のホテルに滞在し、翌日は旧市街や修道院地区を散策。Cabaret Foodstoriesを中心に、ザンクト・ガレンの文化と食を楽しむ週末旅行を組み立てられますよ!
Cabaret Foodstories
会場:Gut & Güter、ザンクト・ガレン
2026/27シーズン:2026年11月〜2027年1月、水曜〜土曜の夜
公演情報・予約:公式サイト
写真提供:Pfefferbeere AG




