食卓を整える、スイスのハーブ習慣
更新日:1 日前
スイスのスーパーマーケットでは、バジルやミント、チャイブ、ローズマリーなど、小さな鉢植えのハーブを見かけます。
キッチンの窓辺やバルコニーに置き、必要な分だけ摘んで料理に使う。そんなハーブのある暮らしには、食事を楽しむための小さなヒントが隠れています。
とはいえ、実際にハーブを買ってみたものの、どう料理に使えばよいのかわからない。結局、少しだけ使って残りを傷ませてしまったという経験はありませんか?
ハーブを使うために、特別なレシピを覚える必要はありません。
いつもの味噌汁にチャイブを散らしたり、トマトにバジルを添えたり。ほんの少し香りを加えるだけでも、食卓の印象は変わります。
今回は、スイスの食卓からヒントを得ながら、身近なハーブの使い方や保存方法、手軽に楽しめるレシピをご紹介します。
ハーブが教えてくれる、色と香りを楽しむ食卓

食事のおいしさは、味だけで決まるものではありません。
料理の色彩、立ち上る香り、食材の食感。そして、目の前に置かれた一皿を楽しむ時間。
スイス・バーゼルを拠点に活躍するシェフ、Tanja Grandits(タニャ・グランディッツ)さんの料理には、色と香りを大切にする独自の世界観があります。
鮮やかな色彩とハーブ、スパイスを組み合わせた料理は、視覚や嗅覚も食体験の大切な要素であることを感じさせてくれます。
もちろん、家庭でレストランのような一皿を再現する必要はありません。
例えば、白いスープに刻んだチャイブを散らす。焼き野菜にローズマリーを添える。ヨーグルトにミントを一枚のせる。
それだけでも、いつもの料理に彩りや香りが加わります。
健康を意識するあまり、食事が義務のようになってしまうこともあります。栄養バランスを整えることは大切ですが、食べる楽しみまで忘れたくはないものです。
ハーブは、そんな日々の食卓に小さな楽しみを加えてくれる身近な食材です。
初心者にもおすすめ。4つのハーブと料理への取り入れ方

スイスのスーパーでも見かける身近なハーブの中から、家庭料理に使いやすい4種類をご紹介します。
1. チャイブ|ねぎのように和食にも使える
チャイブは、細長い緑色の葉と、穏やかなねぎのような風味が特徴のハーブです。
日本の小ねぎに近い感覚で使えるため、西洋ハーブに慣れていない方にも取り入れやすい食材です。
おすすめの使い方
味噌汁や冷奴の薬味に
卵焼きやオムレツに
じゃがいも料理やポテトサラダに
クリームチーズに混ぜてパンのお供に
チャイブの繊細な香りを楽しむなら、細かく刻み、料理の仕上げに加えるのがおすすめです。
一度に大量に使う必要はありません。小ねぎの代わりに少し散らすだけでも十分です。
2. バジル|トマト料理だけではもったいない
バジルといえば、トマトやモッツァレラチーズ、パスタを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、その爽やかで甘みのある香りは、意外にも日本の家庭料理ともよく合います。
おすすめの使い方
トマトとモッツァレラのサラダに
冷たいパスタやそうめんに
冷奴にオリーブオイルと一緒に
きゅうりやトマトを使ったライスサラダに
バジルは長時間加熱するとフレッシュな香りが弱まりやすいため、サラダや冷たい料理では仕上げに加えるとよいでしょう。
いつもの冷奴にバジルを数枚添え、少量のオリーブオイルと塩を加えるだけでも、新しい味の組み合わせを楽しめます。
3. ミント|飲み物だけでなく料理にも
ミントは、すっきりとした香りが特徴です。
ハーブティーや冷たい飲み物に使うイメージが強いかもしれませんが、料理にも幅広く活用できます。
おすすめの使い方
プレーンヨーグルトに刻んで加える
いちごやメロンなどのフルーツに添える
きゅうりとヨーグルトのサラダに
レモンを加えた水や炭酸水に
例えば、プレーンヨーグルトに刻んだミントときゅうり、少量の塩を混ぜると、肉料理やパンにも合う爽やかなソースになります。
甘いものにも塩味の料理にも使えることを知ると、ミントの楽しみ方が広がります。
4. ローズマリー|いつものオーブン料理に香りを
ローズマリーは、細い針のような葉と、力強い香りを持つハーブです。
じゃがいもや根菜、鶏肉などとの相性がよく、オーブン料理に取り入れやすいのが特徴です。
おすすめの使い方
じゃがいものローストに
にんじんやかぼちゃのオーブン焼きに
鶏肉や魚のグリルに
トマトを使った煮込み料理に
例えば、じゃがいもにオリーブオイルと塩を絡め、ローズマリーを1枝添えて焼くだけでも、香り豊かな一皿になります。
ローズマリーは香りが強いため、最初は少量から試してみましょう。
余ったハーブはどうする?無駄にしない保存と活用のコツ
ハーブを使い始めると、次に気になるのが保存方法です。
料理に必要なのは数枚だけ。それなのに、スーパーでは一束や一鉢で販売されていることも多く、使い切れずに困ってしまうことがあります。
そんな時は、ハーブの種類に合わせて保存方法を変えてみましょう。
鉢植えハーブは育てながら使う
鉢植えの良さは、必要な分だけ摘んで使えることです。
ただし、スーパーで販売される鉢植えハーブは、限られたスペースに多くの苗が植えられている場合もあります。
長く育てたい場合は、根の状態を確認し、必要に応じて一回り大きな鉢に植え替えることも検討しましょう。
水や光の必要量は種類によって異なります。鉢の土の状態を確認しながら管理することが大切です。
バジルは冷やしすぎに注意
バジルは低温に弱く、冷蔵庫に入れると葉が黒く変色することがあります。
切り花のように茎を水に挿し、直射日光を避けた室内で短期間保存する方法があります。
使い切れない場合は、ペーストにしたり、刻んで冷凍したりする方法も便利です。
ミントとチャイブは冷凍も活用
ミントは刻んで製氷皿に入れ、水と一緒に凍らせれば、冷たい飲み物に使えます。
チャイブは細かく刻んで冷凍保存しておくと、スープや卵料理に少量ずつ加えられます。
ただし、冷凍したハーブは解凍すると食感が変わるため、フレッシュな飾り付けよりも、調理用として使うのがおすすめです。
ローズマリーは乾燥保存にも
ローズマリーは比較的乾燥保存に向いたハーブです。
洗って水気をしっかり取り、風通しのよい場所で十分に乾燥させてから、密閉容器に保存します。
湿気やカビが発生しないよう注意し、香りが弱くなる前に使い切りましょう。
いつもの和食にハーブを取り入れる、小さなアイデア
日本の家庭料理に西洋ハーブを使うことは、少し難しく感じられるかもしれません。
しかし、最初から特別な料理を作る必要はありません。
例えば、味噌汁にはチャイブ。冷奴にはバジル。焼き魚には少量のローズマリー。食後の果物にはミント。
もちろん、すべての料理にハーブが合うわけではありません。大切なのは、普段の味を無理に変えず、少しずつ組み合わせを試してみることです。
日本には、ご飯と味噌汁を中心に、身近な食材を生かす「一汁一菜」という食卓の考え方があります。
そこに新しい香りをひとつ加えることも、日々の食事を楽しむ方法のひとつです。
和食か洋食かにこだわらず、自分がおいしいと思える組み合わせを見つけてみましょう。
バジルときゅうりのライスサラダ < 一人分>
最後に、バジルを手軽に使えるライスサラダをご紹介します。
冷蔵保存したご飯と身近な野菜を使い、短時間で作れる一品です。バジルの爽やかな香りと、きゅうりのシャキシャキした食感が楽しめます。

材料:1人分
冷やご飯:120〜150g
きゅうり:1/2本
パプリカ:1/4個
バジル:5〜8枚
オリーブオイル:大さじ1
酢またはレモン汁:小さじ1〜2
塩:小さじ1/4弱
黒こしょう:少々
作り方
1. ご飯をほぐす
十分に冷えたご飯をボウルに入れ、清潔な調理器具でかたまりをほぐします。べたつきが気になる場合は、軽く水で洗い、水気をしっかり切ります。
2. 野菜を切る
きゅうりとパプリカを小さめの角切りにします。
3. 味をつける
ボウルにご飯、きゅうり、パプリカを入れ、オリーブオイル、酢またはレモン汁、塩、黒こしょうを加えて混ぜます。
4. バジルを加える
最後にバジルを手でちぎって加え、軽く混ぜます。香りを残すため、バジルは最後に入れるのがおすすめです。
5. 味を整える 味を見て、足りなければ塩やレモン汁を少し足します。
コツ・ポイント
バジルは包丁で細かく切るより、手でちぎると香りがやさしく残ります。ご飯は温かいものより、冷やご飯の方がサラダらしく仕上がります。さっぱり仕上げたい時はレモン汁を小さじ2、まろやかにしたい時は小さじ1がおすすめです。
アレンジ
ゆで卵やツナ、チーズなどを加えれば、より食べ応えのある一皿に。ミントを少量加えると、さらに爽やかな味わいになります。
ひとこと
スイスのスーパーやバルコニーで手に入るハーブを使って、冷やご飯をやさしい一皿に。「今あるもので食卓を整える」小さなレシピです。
ご飯の取り扱いについて
炊いたご飯は、常温で長時間放置しないことが大切です。残ったご飯は、できれば調理後1時間以内に速やかに冷やして冷蔵庫に入れ、24時間以内に使用してください。適切に保存されたご飯だけを使い、サラダは作り置きせず、調理後すぐに食べましょう。
ハーブのある暮らしは、難しく考えなくていい
ハーブを上手に使うために、専門的な知識や特別な調理技術が必要なわけではありません。
まずは、好きな香りのハーブを一種類選んでみる。
いつもの料理に少し加えてみる。
余ったら、別の料理に使ってみる。
それだけでも、食卓の楽しみ方は少しずつ広がっていきます。
スイスのスーパーで見かける小さな鉢植えハーブは、そんな暮らしの入口になるかもしれません。大切なのは、何種類ものハーブを使いこなすことではなく、自分の食生活に合う使い方を見つけること。
香りを楽しみながら、無理なく、おいしく。
今日の食卓に、ハーブをひとつ加えてみませんか。
参考資料
著者について

ボロミエ利美|Limi Bolomier
Eat Well · Feel Well · Live Well 創設者・編集長
スイスを拠点に、日英バイリンガルメディア「Eat Well · Feel Well · Live Well(EFL)」を運営。ホテルやレストラン、食、旅、アート、ウェルビーイングを取材し、現地での体験や作り手との対話を通じて、訪れる価値や、その背景にある思いを伝えています。
飲食の現場経験とデジタルマーケティングの知見を生かし、食の魅力を多角的に発信しています。美容食マイスター。アロマセラピーやハーブを学んだ経験を生かしたレシピも発信。『セラピスト』『nina’s』への寄稿歴あり。
日々の暮らしの中で、心が豊かになるきっかけを届けています。




