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ハサミの先にある未来。スイスで育つヘアアーティストたち

33 分前
読了時間: 6分


スイス・Badenで開催されたHairfestival Switzerland(ヘアフェスティバル・スイス)。会場では、カット、カラー、スタイリング、バーバー技術など、さまざまなヘアクリエーションがステージ上で披露されました。


しかし、そこで見えてきたのは、単に最新のヘアスタイルや美容技術だけではなく、髪の質感や動き、顔立ちとのバランスを読み取り、その人に合わせた表現を形にしていくヘアアーティストとしての仕事。そして、自らの技術を磨くだけでなく、経験や知識を次の世代へ伝えていくクリエイティブプロフェッショナルとしての姿です。


Hairfestival Switzerlandは、完成された作品を見る場所であると同時に、技術が共有され、新しい才能が育っていく場所でもありました。

今回の記事では、華やかなステージの裏側にある、スイスのヘアアーティストたちの技術と表現、そして次世代へとつながる育成の文化に目を向けます。


ステージで見る、ヘアアート


Hairfestival Switzerlandのステージでは、バーバーカット、カラー、アップスタイル、ロングヘアのスタイリングなど、異なる分野の技術が次々と披露されました。

印象的だったのは、完成したヘアスタイルだけではなく、そこに至るまでの過程そのものです。


髪の流れや質感を見極め、どこにボリュームを持たせ、どこを削ぎ、どの角度からフォルムをつくるのか。ステージ上では、ヘアアーティストの判断と手の動きが、そのまま一つの表現として見えてきます。


ヘアスタイルは、単に髪を整える作業ではありません。顔立ちや雰囲気、その人が持つ個性とのバランスを考えながら、立体的な形をつくり上げていく仕事です。そこには、技術者としての正確さと、クリエイティブプロフェッショナルとしての感性の両方が求められます。

ライブステージだからこそ、仕上がった一瞬だけではなく、作品が生まれていく時間まで見ることができる。Hairfestivalのステージは、技術が表現へ変わっていく瞬間を間近で感じられる場所でした。



Look & Learn ― 見て学ぶということ


Hairfestival Switzerlandのステージで繰り返し登場したのが、Look & Learn(見て学ぶ)という形式です。


完成したスタイルを見せるだけではなく、カットやカラー、スタイリングの工程を目の前で共有しながら、その技術や考え方を伝えていきます。


これは、決して新しい学び方ではありません。昔から職人たちは、先人の手元を見ながら技術を身につけてきました。ファッションの世界でも、料理の世界でも、まず「見ること」から学びが始まります。


Hairfestivalのステージでも同じでした。

どのように髪を見て、どこに変化をつけ、どのタイミングで手を加えるのか。完成したスタイルだけでは分からない判断の積み重ねを、観客は目の前で見ることができます。

技術を言葉だけで説明するのではなく、実際の動きを通して伝える。そこには、ヘア業界ならではの実践的な教育の形がありました。



次世代アーティストを育てる


会場に並んでいたウィッグ作品は、コンテストのために制作されたものです。カラーリング、フォルム、質感、構成。それぞれの作品には異なる発想が表れ、技術だけでなく、作り手自身の感性や世界観も映し出されていました。


こうしたコンテストは、若い美容師や学生にとって、自分の技術を試し、表現を作品として形にする大切な機会です。


日常のサロンワークでは、お客様の希望に応えることが中心になります。一方、コンテストでは、自分自身でテーマや構成を考え、一つの作品として完成させる。その経験が、クリエイティブプロフェッショナルとしての視点を育てていきます。

プロの技術を見る。そして、自分でもつくってみる。他の人の表現にも触れる。

その繰り返しの中で、次のヘアアーティストが育っていきます。



椅子の向こう側


Hairfestival Switzerlandで印象に残った言葉のひとつが、「椅子の向こう側」という言葉です。

これは、ステージに立つアーティストから次の世代へ伝えられた、生の言葉でもありました。


そして、まさにその通りではないでしょうか。

ヘアアーティストの仕事は、ステージ上で見せる華やかな技術だけではありません。実際のサロンでは、一人ひとり異なる髪質や顔立ち、ライフスタイル、そして「どう見られたいか」という思いに向き合います。

そこで必要になるのは、カットやカラーの技術だけではありません。相手の言葉を聞き、その人自身を理解しながら、似合う形へ落とし込んでいく力です。

自分の表現を一方的に押し出すのではなく、目の前の人との対話の中からスタイルをつくる。


椅子の後ろには、観察する力、提案する力、信頼関係を築く力があります。そして、それらを一つの仕上がりへ結びつける感性があります。


完成したヘアスタイルだけでは見えないもの。それこそが、「椅子の向こう側」という言葉が伝えていた仕事の本質なのかもしれません。



髪を切るだけの仕事じゃない


会場で目にしたもう一つの言葉が、「髪を切るだけの仕事じゃない」でした。


その一文は、Hairfestival Switzerlandで語られていた価値をよく表しています。

ヘアスタイルは、単に髪を短くしたり、形を整えたりするためのものではありません。


ときには、その人のライフスタイルを映し出し、その人らしさを表すものとなり、気持ちや印象を変える変化にも繋がります。そして美容師にとっては、表現であると同時に、技術と信頼の上に成り立つ「ビジネス」でもあります。


髪型が変わることで、鏡に映る自分の見え方が変わる。周囲から受ける印象が変わり、新しい服を選びたくなったり、これまでとは違う自分を試してみたくなったりすることもあります。


ヘアアーティストがつくっているのは、単なる形ではありません。

その人がどう自分を表現するのか。その一部に関わる仕事でもあるのです。



文化や技術を次へ手渡していくこと

Hairfestival Switzerlandを通して見えてきたのは、個々の技術や作品だけではありません。そこには、アーティストが育ち続けるための文化そのものがありました。


一人のヘアアーティストが成長していくためには、技術を学ぶ機会だけでなく、自分の表現を試し、他者の視点に触れ、次の目標を見つけられる環境が必要です。


そして、その環境は一人ではつくれません。先輩から受け継ぐ経験、仲間から受ける刺激、自分より若い世代へ渡していく知識。そうした積み重ねが、業界全体の創造性を支えていきます。


Hairfestival Switzerlandが見せていたのは、すでに完成された才能だけではありませんでした。


これから育っていく才能にも、表現する場所と次へ進むきっかけが用意されている。

ヘアアーティストを「育てる」ということは、技術を教えることだけではなく、挑戦を続けられる環境をつくることでもある。そこに、このイベントが持つ大きな価値を感じました。




PM Care Systems AG

Hairfestival Switzerlandを主催するのは、チューリッヒを拠点とするPM Care Systems AGです。同社は1994年創業のスイス企業で、プロフェッショナル向けのヘアケア、カラー、スタイリング製品を扱い、長年にわたりスイスのサロン業界を支えてきました。


現在は、Paul MitchellやProfessional by Famaなどのプロフェッショナル向けブランドをスイスで取り扱うディストリビューターとして、サロン向けの商品供給だけでなく、教育や業界ネットワークづくりにも関わっています。


同社が掲げる考え方の一つが、“Hairdressers first”。美容師やサロンを単なる顧客としてではなく、業界をともにつくるパートナーとして捉える姿勢です。


今回会場で見た、技術を共有し、若い才能に挑戦の場をつくるという考え方は、Hairfestival Switzerlandだけのものではなく、PM Care Systems AGが長く関わってきたスイスの美容業界との関係性にもつながっているように感じました。



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