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アップサイクルフードという新しい発想

著者:Eat Well · Feel Well · Live Well 編集部

ジュースを搾った後に残る果肉。

ビールを造った後の麦。

コーヒーを淹れた後のかす。


食品を作る過程では、私たちが店頭で目にする商品以外にも、さまざまな副産物が生まれます。

これまで、その多くは「残りもの」や廃棄物として扱われてきました。

ところが今、その捨てていたものを新しい食品の原料として活用するアップサイクルフードが注目されています。

ゴミを減らすだけではありません。

これまで価値がないと思われていたものから、新しい商品と市場を生み出そうとしているのです。



世界では大量の食品が捨てられている

国連環境計画(UNEP)の「Food Waste Index Report 2024」によると、2022年に世界で廃棄された食品は約10.5億トン。


これは、消費者が利用できる食品のおよそ19%に相当します。

ただし、この数字は主に家庭、小売、外食などで発生する食品廃棄を示すもので、食品製造の工程で生まれる副産物そのものとは区別して考える必要があります。

一方、食品加工の現場では、果物の皮や種、ジュースの搾りかす、穀物の残渣など、まだ利用できる可能性を残した副産物が数多く生まれています。

そこで出てきたのが、


「どう捨てるか」ではなく、「そもそも、これは本当にゴミなのか?」

という発想です。



ビールを造った後の麦が、食品になる

ビール醸造では、麦芽から糖分などを抽出した後に大量の穀物が残ります。

Brewers' spent grainと呼ばれるこの副産物は、乾燥・加工することで、パンやクラッカー、スナックなどの原料として利用できます。


ジュース製造でも同じです。

果汁を搾った後に残る果肉や皮には、食物繊維などが残っています。

それなら捨てるのではなく、別の商品にできないか。

食品産業が長年「副産物」と呼んできたものを、もう一度、食材として見直す動きが始まっています。



「食品ロス削減」とは少し違う

アップサイクルフードが面白いのは、単に食品ロスを減らすことだけが目的ではない点です。

売れ残ったパンを捨てない。

賞味期限が近い商品を値下げする。

食べきれなかった料理を持ち帰る。

これらももちろん重要です。

しかしアップサイクルでは、さらに前の段階に目を向けます。

食品を作る過程で生まれるものまで、資源として設計し直す。


つまり、

「廃棄を減らす」

から、

「廃棄物という概念そのものを変える」

へ。


ここに新しさがあります。



温暖化とも無関係ではない

食品を捨てることは、単にゴミを増やすだけの問題ではありません。

UNEPによると、食品ロス・食品廃棄は世界の温室効果ガス排出量の8〜10%に関係しています。

食べ物が私たちの手元に届くまでには、農地、水、肥料が使われ、加工、冷蔵、輸送にもエネルギーが必要です。

食べずに捨ててしまえば、そこまでに投入された資源も十分に活かされないことになります。

さらに、廃棄された食品が埋立地などで分解される過程では、メタンが発生することがあります。

そこで、食品の製造過程で生まれる副産物を新たな原料として利用できれば、一つの農産物から得られる価値を増やせる可能性があります。

ただし、アップサイクルすれば必ず環境負荷が小さくなるとは限りません。

新しい食品にするためには、乾燥、加工、輸送、包装にもエネルギーが必要です。

重要なのは、単に「捨てない」ことではなく、一度使った資源を、どこまで無駄なく活かせるか。


その視点です。



「ゴミ」だったからこそ、ビジネスになる

企業側にとっても、アップサイクルには別の可能性があります。

これまで処分するためにコストがかかっていたものが、新しい商品原料として価値を持てば、


廃棄コスト → 原料 → 商品 → 売上


という新しい循環が生まれます。


ただし、ここからが本当の勝負です。

環境に良いという理由だけで、食品が長く売れ続けるとは限りません。


おいしいか。

価格に納得できるか。

また買いたいと思えるか。


アップサイクルフードは今後、単なる「サステナブル商品」ではなく、普通の商品として選ばれる品質を作れるかという段階に進んでいくでしょう。



次のヒット商品は、すでに捨てているものの中に?

食品産業はこれまで、より良い原料を探してきました。

しかし、これからはまったく違う場所に原料が眠っているのかもしれません。


工場の片隅。

ジュースを搾った後。

コーヒーを淹れた後。

ビールを造った後。


私たちがこれまで「残りもの」と呼んできたものです。

新しいものを作るために、新しい資源を使う。

その当たり前が、少しずつ変わり始めています。


すでにあるものから、まだ存在しない商品を作る。


次のヒット商品は、新しい畑からではなく——

ゴミ箱の手前から生まれるのかもしれません。


Editor’s Note

「捨てるもの」と「使えるもの」の境界は、誰が決めたのでしょう。

これまで当たり前のように廃棄されてきたものに、もう一度目を向けてみる。そこから新しい商品やビジネスが生まれるアップサイクルフードは、単なる食品ロス対策ではなく、私たちが「価値」をどう見つけるかという発想の転換なのだと思います。

次のヒット商品は、意外なほど身近なところに眠っているのかもしれません。



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